海で繋がる世界を舞台に、日本を支える海運業界で活躍
2025.06.12
鈴木 朝子

鈴木 朝子
SUZUKI Asako
川崎汽船株式会社
2021年度 国際社会科学部国際社会科学科卒
私×学習院大学
学生が挑戦できる環境を最大限に活用
社会に出てから学生時代を振り返ってみると、学習院大学には学生の挑戦を後押ししてくれる環境が整っていたことを実感します。私は授業や留学等を通して、その恩恵を最大限に受けた学生の一人です。また、少人数制の授業でプレゼンテーションやディスカッションをする機会が多くあったことも大きな収穫でした。社会人として大切な「自身の意見を持ち、わかりやすく伝え、他人と意見交換をする」というスキルを磨く訓練ができたからです。こうした学生時代の学びがあったおかげで、今社会人生活を送れていると思います。
世界第4位の貿易大国、日本。その輸出入の99%を担っているのが船を使った海上輸送だ。日本は島国であることから、近代化して以降、海運事業が大きな発展を遂げ、現代では世界屈指の海運国となっている。まさに日本の経済と日本人の生活を支えていると言っても過言ではない海運業界に惹かれて飛び込んだのが、国際社会科学部国際社会科学科の卒業生、鈴木朝子さんだ。
「グローバル企業を軸に就職活動をしていましたが、海運の仕事を知って"こんなにグローバルでダイナミックな業界があるのか!"と驚きました。それから海運業界を第1志望に就職活動を行い、川崎汽船から内定をいただくことができました。就職を決めた一番の理由は社員の方々がとても魅力的だったからです。文字通り"世界を舞台"に仕事をしていることに誇りを持ち、生き生きと働かれている。その姿に憧れて、自分もこの会社で社会人として成長したいと強く思っていたので、内定をいただいたときはとても嬉しかったです」
海を通じて世界を繋ぐ海運の仕事。そこにはさまざまな国のさまざまな職種の人々が携わる。
「船の運航には、船長、船主、管理会社、国内外の代理店、顧客や社内関係者など多数のステークホルダーが携わります。入社してすぐに担当したオペレーション業務の役割は、顧客の大切な貨物を安全かつ遅延なく届けるため、彼らと連携して船が滞りなく運航できるように管理することでした。業務の範囲は多岐にわたり、船のスケジュール管理、積載貨物のリスト・寄港地の展開、天候を考慮した航行ルート・速度の指示、燃料の手配、さらには月次収支業務も手がけます」
鈴木さんが所属したのは自動車船事業グループ。川崎汽船は1970年に日本で初めて自動車専用船を導入して自動車の輸送を行ったパイオニアであるだけに、重要な事業だ。
「私は中近東アフリカおよび中南米カリブ航路を運航する自動車専用船のオペレーション業務に従事しました。4000台以上が積載される1隻の船の2~3か月にわたる航海の安全運航を、メインオペレーターとして月に4~6隻担当しました。船のサイズ・扱う金額の規模感から、若手社員でありながら、広範なスケールのビジネスに携わることができるため大きな責任感・やりがいを感じられます。船の安全性や顧客の要望等あらゆる観点を踏まえ、コストを最小限に抑えることで利益の最大化に貢献できます。
航海は長期間にわたるため、トラブルはつきものです。船・車のトラブル、海賊や密航者の出現など思わぬ事態も起きます。オペレーターは、現状を把握して関係各所と情報を共有し、問題解決まで主導することが求められるため責任は非常に重大です。船は24時間365日運航しているので、日本と時差がある地域でトラブルが起きると、昼夜を問わず緊急対応を迫られることもあります。
大変な業務ですが、あらゆる関係者と密なコミュニケーションを取りながら問題を解決できたときの達成感は格別です。対応を重ねたことで即座に判断、応用できた際には、成長を実感しました」
輸送船にはさまざまな国籍のスタッフが関わるため、業務は基本的に英語で行われる。学生時代に磨いた英語力を駆使して仕事をしたいという夢を持っていた鈴木さんにとって理想的な環境だ。
「高校生のころ、カナダに1年間留学して視野が大きく広がったことから、さらに英語力を高めて異文化交流したいと考え、国際社会科学部に進学しました。『国際ビジネスの第一線で活躍する人材を育成する』というスローガンも魅力的でした。『CLIL(内容・言語統合型学習)』では、段階的に英語で社会科学を学びます。この学習プログラムのおかげでアカデミックな授業内容も英語でスムーズに理解することができました。
特に印象に残っているのが『地域研究』の授業です。フェアトレードに中高生の頃から関心を持っていたので、授業で学ぶことができてよかったです。また、国際経営のゼミでは海外進出した日本企業のケーススタディを学びました。文化や商習慣の違いなど、どのような障壁があるのか、それらをどのようにして乗り越えてきたのかを調査しましたが、それによりグローバルな仕事をするうえで大切な視点も身につけられたと感じています」
学部が提供する海外研修制度も存分に活用して英語力を鍛えた。
「1年次の夏休みにはニューヨークにて日系企業のインターンシップに参加しました。2年次にはオレゴン大学に半年間留学して国際ビジネスや環境学を学びました。現地では大量の課題があり、寝る間もないほどハードに勉強する日もありましたが、空き時間には現地で仲良くなった友人と大学のアメフトチームの試合を観戦したり、スキーをしたり、楽しい時間を過ごすことができました」
異文化に触れるだけでなく、母国語以外の言語で学んだり、ディスカッションをしたり、海外の人と深いコミュニケーションを取れるようになったことで、グローバルな舞台で働きたいという気持ちがさらに強くなったという鈴木さん。3年次には日本と海外の生徒を繋ぐオンライン国際交流の授業を提供する企業の長期インターンに参加するなど、社会に出るための準備を重ねた。どのようなことにも積極的に取り組む彼女のモットーは、『何事も経験』。トラブルや不得意に思える業務も自分を成長させるものだと捉えて、楽しさを見出し、新しい知識やスキルを吸収するのだという。
「自動車船のオペレーション業務を1年半担当した後、同じ部署の業務プロセス・システムの統括を行うチームに配属されました。現在は内外地のニーズをグローバルに標準化した新システムの構築に取り組んでいます。業務の効率化、社員の生産性を高めることで新たな価値を生み出すための時間を創出することが狙いです。
地域特性・業務習慣・積載貨物等の各航路の違いを一律に統合するのは難しいですが、プロジェクトを率いるHQ(本部)として関係各所とミーティングを重ねながら最適解を模索しています。オペレーターとは異なる業務ですが、会社に大きな変化をもたらすプロジェクトに携われることに、やりがいを感じています」
入社3年目の鈴木さんだが、今後、さらに経験を積んでステップアップを目指している。
「直近の目標は、自分のアイデアを形にして業務システムに反映させること、そのためにも業務の全体像を把握すべく、業務フローやシステムに関する知見を深めたいと考えています。また、将来的には入社以来所属している自動車船以外の部署も経験し、よりスキルアップしていきたいと思います」
※所属・肩書等は取材当時のものです。