街とともに歩んできた百貨店から日本の文化を発信する
2026.06.17
三好 拓斗
三好 拓斗
MIYOSHI Takuto
株式会社松屋
2020年度 文学部日本語日本文学科卒

私×学習院大学
距離の近い学びの中で出合った、日本語の奥深さ
日本語日本文学科は学生の人数があまり多くなかったからか、先生が学生のことを把握してくださっていることが多かったです。距離が近いことで、自分の取り組みをしっかり見ていてくださっていると実感でき、モチベーションが高まりました。印象に残っているのは、現代語の意味の変化について学んだことです。例えば、かつて『電』という漢字は"光"を意味していましたが、近代に入って電気の概念が現れたことで、「電車」や「電柱」など、「電」1文字で「電気」を表すように変化したのです。このように時代にあわせて言葉も変化することを知り、日本の歴史や文化に対する視野が大きく広がりました。
高級ブランドのショップが立ち並び、インバウンドツーリストであふれかえる東京・銀座。1925年に開店した老舗百貨店・松屋銀座は、街の発展を見守り続け一世紀を迎えた。明治期に呉服店として創業し、関東大震災後の復興期に銀座へ移転。その後の戦後復興、高度経済成長、バブル期、そして観光都市となった現代まで、銀座が歩んだ歴史のすべてを共有してきた。そして今も、最先端のファッションやカルチャーを発信する拠点として、存在感を放ち続けている。
「2025年に銀座店が開店百周年を迎えたことを祝して、銀座を代表するような老舗の銘店とコラボレーションし、限定商品を販売する催事を実施しました。『松屋さんならば』とご協力いただけることも多く、長年にわたり、街と共に歩んできたことを実感しました」
そう話すのは、文学部日本語日本文学科の卒業生で、現在は顧客販促部顧客販促課で主任を務める三好拓斗さん。学生時代、コンビニエンスストアでアルバイトをしたことをきっかけに小売業界に関心を持ち、中でも商品に対するこだわりの強い百貨店で働きたいと考え、松屋への就職を決めた。
「私は中等科から学習院に通ったのですが、松屋が制服の販売を手がけていたこともあり、深い縁を感じました。また、卒業生が多く働いていることも魅力でした」
入社当初は、弁当や惣菜を販売する食品部に所属。商品の搬入や陳列、接客や会計など、販売の現場をひと通り経験した。
「百貨店の仕事というと華やかなイメージがありますが、実は多くの地道な裏方仕事に支えられています。お客様に対してと同じくらいに、社内で関わるすべての方に対しても、日々感謝の気持ちを忘れずに仕事に取り組んでいます」
その後、2024年に異動した顧客販促課では、銀座店全体のプロモーションの企画や運営を担当することになる。
「1つの売り場を経験した後、急に全館を視野に入れて動かなければならなくなったことに初めは戸惑いましたが、店全体を俯瞰できる業務にはいつか携わりたいと考えていたので、とてもやりがいを感じています。私は食品売場しか経験しておらず、社内ですらもまだお話ししたことがない方が多かったので、まずは円滑にコミュニケーションを取れるように、自分を知ってもらうことから始めました。また、就職活動のときに得た『私がやります』の精神のもと、与えられたチャンスは積極的に取り組むよう心がけています。最近ではイベントの司会を担当することがありとても緊張したのですが、失敗を恐れず自分なりに工夫して挑戦することで経験値が大きく高まることを実感しました」
「社会人6年目ともなると、担当業務も増えましたし、責任も重くなりました。そんなとき、私は『すぐにやる』をモットーに仕事に取り組んでいます。今できる仕事を後回しにしてしまうとその間にさまざまな案件が入ってきてしまい、優先順位が高かったはずの仕事に手が回らなくなることが起きがちです。それを防ぐには、今目の前にある仕事を置いておかず『すぐにやる』ことが大切です」
イベントのチラシやウェブサイトの原稿の作成・校正をすることも多いという三好さん。日本語日本文学科での学びは、仕事で直接的に役立っている。

「お客様の目に触れるものであるため、言い回しや表記の正確性にはかなり気を遣います。もともと、普段使っている日本語を掘り下げて学ぶことに面白さを感じて、日本語日本文学科に進学したこともあるので、そこで得た知識や視点を活かして日々の業務に当たるのはとても面白いです」
三好さんは、幼少期から鉄道に熱中。中等科時代から大学まで「鉄道研究会」一筋で活動してきた。
「よく『何鉄ですか?』と聞かれることが多いですが、私は鉄道全般が好きなので、いつも答えに迷ってしまいます。そのくらい、私の中で鉄道の存在は大きいです。中でも、大学の『鉄道研究会』での活動は特に印象に残っています。夏合宿では、部員のみんなと電車に乗って全国各地を訪ねました。岩手県にある引退したブルートレインを再利用した宿泊施設に泊まったことは、今でもとても良い思い出になっています」
鉄道で全国各地を旅した経験を、現在の仕事でも活かしたいと三好さんは考えている。
「松屋では、日本各地の伝統工芸や産業・文化をアップデートして発信する、『松屋の地域共創』という取り組みに力を入れています。全国のさまざまな地域の魅力を、銀座の街から発信しようというものです。鉄道も当然、街に欠かせない要素の一つ。鉄道で培った知識や土地勘を活かしながら、各地の魅力を伝えていく。ゆくゆくは、そんな自分ならではのイベントを企画するのが夢です」
インバウンドが活性化する中で、街の顔から、日本の顔になりつつある松屋銀座。それに伴って、三好さんが担当するプロモーションイベントはさらに重要性を増している。
「百周年のプロモーションでは、銀座の銘店とコラボレーションしたオリジナルコッペパンや、有名デザイナーによるトートバッグ、Tシャツなどの記念グッズを販売し、いずれもすぐ完売してしまうなど、大きな手応えを感じました。全館が関わるイベントだったためプレッシャーは大きかったですが、自分の取り組みが目に見える成果として表れることにとてもやりがいを感じました。同時に、百貨店というビジネスは、ただ商品を売るだけでなく、お客様に喜んでいただくこと、文化を発信していくことに意義があると考えています。それを常に念頭に置いて、地域に根ざした歴史ある百貨店としての更なる発展に貢献していきたいです」
※所属・肩書等は取材当時のものです。