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病気や老化に立ち向かう新薬実用化への挑戦

2024.06.10

柳 茂 教授

Prof. YANAGI Shigeru

理学部 研究知

専門:分子生化学

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病気や老化を引き起こすメカニズムを発見

 高齢化に伴い、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患を患う高齢者は増加の一途をたどっています。医師として臨床の現場にいた私は、その発症メカニズムを解明したいという思いで、研究の道に方向転換しました。研究を進める中で、細胞内のミトコンドリアの機能不全が原因のひとつであることがわかってきました。ミトコンドリアは、エネルギーの産生を担う重要な細胞小器官である一方、加齢とともに機能が劣化し、有害な活性酸素をまき散らして老化を誘発すると言われています。そこで、ミトコンドリアの機能を正常に維持するメカニズムを解析したところ、MITOLという酵素を発見。ミトコンドリアは細胞内に溜まったゴミの分解・除去を行う役割も果たしており、MITOLはその手助けを行います。しかし、MITOLは加齢により減少するためその能力が落ち、細胞の老化や老化に関連したさまざまな病気を引き起こすことを解明しました。

学習院大学発のベンチャー企業を立ち上げる

 続いて取り組んだのが、MITOLを活性化する薬剤の探索です。その結果、活性化に寄与する薬剤を複数同定することに成功。その中のひとつであるベルベルビンという物質を老化マウスに投与して効果を検証したところ、皮膚の老化やメタボリック症候群などさまざまな疾患の予防に有効であることがわかりました。そうした成果をもとに特許を出願し、学習院大学発のベンチャー企業を立ち上げ、新薬の開発に挑戦しています。アルツハイマー病やパーキンソン病、がん、心不全など、老化と密接に関連した疾患への効果も期待されており、他大学や企業と共同研究も行っています。学習院大学は、認知症・がん・老化・再生医療分野において、文理融合による統合的な研究に取り組んできました。新たな学際領域として「生命社会学Ⅰ・Ⅱ」という全学共通科目も開講しているので、多角的な視点で超高齢社会に挑戦したい人はぜひ授業でお会いしましょう。

PROFESSOR'S LIFE STORY

大学 牛の血液から免疫に関与する新しい酵素を精製する研究に取り組む。2年半かけて教科書に載るほど重要な酵素を発見した。
就職 内科医師として病院勤務を経験。治療法のない難病がまだ数多くあり、臨床医としての限界を感じる。
研究の道へ 難病の治療法を自ら見つけ出すために研究の道へ進む。主に老化に伴う疾患を研究テーマにした。
訪れた転機 ミトコンドリアの機能を正常に保つMITOLとそれを活性化させる薬剤を発見。大学発ベンチャーを立ち上げて実用化を目指す。

※所属・肩書等は取材当時のものです。