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フィールドワークを通して現実に迫り、国際マーケティング戦略の未来を読み解く

2026.06.17

臼井 哲也 教授

Prof. USUI Tetsuya

国際社会科学部 研究知

専門:国際マーケティング

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先生の研究内容を教えてください

国境を越えて価値を共創する
ビジネスモデルの仕組みを研究

 私の主な研究テーマは、「国境を越えた価値の共創」です。日本で成功している事業でも、海外ではうまくいかないことが多々あります。その一方で、日本よりも海外の方が成功する場合もあります。同じ製品やサービスを提供しても国によってその評価が変わるのです。私の研究では、実際に企業の経営者や現場のスタッフにインタビューを行い、その内容を質的データ分析という手法で整理し、フレームワークに落とし込み、見えていなかった事業がもたらす新しい価値を可視化します。それにより、国境を越えて、企業と現地の顧客、取引先、スタッフらが共に価値を創造し、進化していくビジネスモデルの仕組みを研究しています。

具体的な研究事例を教えてください

地域とともに価値を創り上げていく
日本型ショッピングモール

 私は長年、イオンモールのビジネスモデルについて研究を続けてきました。イオンモールは日本全国に展開されており、身近な存在ですが、実はとても優れたビジネスモデルを構築し、日々進化していると考えています。ただお店でものを販売するだけでなく、お客様、テナント、地域コミュニティ、自治体などが一緒になってモールという「場」を盛り上げる仕組みを作り上げています。テナントと協力して時間帯や客層に合わせてイベントを企画、実行したり、地域の自治体や学校などのイベントに施設を貸し出して地域の皆さんが集う憩いの場を共に作り出しています。それにより、郊外の店舗でも集客できる仕組みができているのです。イオンモールは現在、中国や東南アジアを中心に海外にも進出していますが、それぞれの店舗は地域の顧客から支持されており、業績を伸ばしています。ショッピングモールの本家であるアメリカをはじめ、他国ではデベロッパーは施設を作ること自体をゴールとしているケースが多いですが、イオンモールは、「価値共創」に重きを置き、長期にわたる地域への貢献とまちづくりまで視野に入れたビジネスモデルをそれぞれの地域の皆さんと共に構築しています。

研究の道に進んだきっかけは何ですか

起業家としての挫折と経験を活かし
国際マーケティング研究の道へ

 実家が商売を営んでいたこともあり、子どもの頃から経営者になることが目標でした。地元の高校を卒業後、アメリカの大学でアントレプレナーシップ(起業家精神)を学び、帰国後に起業したのですが、向かうべき方向性が見出せず、挫折を経験しました。そこで広告代理店のマーケティング部で実務経験を積みながら大学院で国際マーケティングを学んでみることにしました。自分が立ち上げた会社のサービスの価値を明確に定義し、他者へ伝えるのに苦労した経験があったことから、高い問題意識を持って研究に打ち込むことができました。大学院では学部のゼミ教育の一端に触れる貴重な機会に恵まれ、研究のみならず大学生の教育活動にも大きな魅力を感じ、大学教員としての道を選び、これが大きなキャリアチェンジとなりました。

研究のモットーを教えてください

フィールドワークを通して
「現実に迫り、理論化に挑む」

 「現実に迫る」ということをモットーにしています。1本の論文を書くにあたり、企業の社長からマネージャーまで多くの関係者にインタビュー取材を行い、現場の課題、取り組みについて詳細に聞き出します。その際、先入観を持ち込まず、聞き手に徹することを心がけています。また、実際に店舗に赴いて顧客の動向を観察したり、ライバル店舗を視察したりするなど、現場に足を運ぶことを繰り返しています。現在の社会科学はビッグデータを分析する手法が主流ですが、私はフィールドワークを通して現実に迫り、既存研究や理論との往復をしながら、いま実際に起きていることとこれから問題になることを論理的に説明できる新しい概念やフレームワークを形成したいと考えています。とはいえ現実のビジネスは複雑で、さまざまな要素から成り立っています。そのため、あくまでひとつの要素を切り取った研究として、謙虚な姿勢で成果を発表するように心がけています。

臼井教授の知の展望

企業、顧客、地域社会の間に
「好循環」を生み出す事業の
仕組みと論理を解明したい

 従来のビジネスでは、いかにしてよい製品を作って売るかということが重視されてきました。しかし、現代ではイオンモールの例のように、みんなで協力しながら持続的に利益を上げていく「好循環」の仕組みが重要になっています。私の国際マーケティング戦略の研究では、顧客のみならず、地域社会や取引先の皆さんを笑顔にできるような持続的な価値共創の仕組みをいかに作るかということを目標としています。今後もそうした取り組みをしている企業や地域に関する研究結果を積み上げ、世界へ発信していきたいと考えています。

PROFESSOR'S LIFE STORY

大学時代     高校卒業後、起業を目指しアメリカの大学に進学。アントレプレナーシップを学ぶ。
大学院時代 帰国して起業の後、広告代理店でマーケティング実務を学ぶ。働きながら通いはじめた大学院で国際マーケティングに出会う。
研究者として 研究の醍醐味と大学教育に魅力を感じ、大学教員の道へ。国際社会で「好循環」を生み出すビジネスモデルについて研究を続ける。

※所属・肩書等は取材当時のものです。