フランス語圏文化学科|訳読する力だけではなく、話す力、調べる力も身につく
2019.06.05
志々 見剛 准教授、フランス語圏文化学科3年
STUDENT'S VOICE
訳読する力だけではなく、話す力、調べる力も身につく
M.Mさん
埼玉県・聖望学園高等学校 出身
1年次にフランソワ・ラブレーの『ガルガンチュア』を扱う授業を履修した際に、ほかのフランス文学には見られないユーモアのある表現や、個性豊かな登場人物たちに興味を惹かれました。さらに学びたいと思ったため、同作品の正編となる『パンタグリュエル』を扱う志々見剛先生のゼミに所属。ゼミでは、作品の中から自分が担当する箇所を訳読し、フランスの歴史的背景も調べながら理解していきます。そしてその内容を発表するのですが、みんなが理解しやすいように話し方を工夫し、出てきた質問に答えられるよう参考文献を探して細かいところまで調べています。そのおかげもあって、発表する力や話す力、調べる力が培われました。
ABOUT SEMINAR
風刺にパロディー、悪ふざけと大まじめが混在する巨人小説
滑稽なエピソードの裏に隠れているテーマを探る
巨人が主人公の16世紀仏文学を知っていますか? フランソワ・ラブレーによる『パンタグリュエル』です。食べ物も知識もよく吸収する巨人パンタグリュエルを中心に、荒唐無稽な逸話から言葉遊び、権威への風刺やパロディー、哲学的な考察など、まじめと悪ふざけ、様々な要素が渾然一体となった物語です。
人間が巨人の口の中を探検したり、教皇など位の高い人々が地獄でひどい目にあったり。滑稽なエピソードにあふれていますが、そこに底流するのは「知識を得るとは、それを伝達するとはどういうことか?」という実にまじめなテーマです。
ある章で、博学なパンタグリュエルの噂を聞きつけ、イギリスの学者が論戦を張るべく訪ねてきます。その討論の条件は、言葉を使わず、手だけで話すということ。討論の相手は、パンタグリュエルの配下のパニュルジュで、彼は学者を馬鹿にするような仕草をします。しかし、学者は、その仕草を勝手に意味のあるものとして深読みし、最後に「負けました」と敗北宣言をします。知識のやりとりは誤解に基づいたものになりがちであるということが、滑稽な場面を通じて、誇張して書かれている点が興味深いでしょう。
自分なりの見解を言語化し、人に伝える能力を養う
ゼミでは、仏文学の原書を、手続きを踏んで読み解きます。手続きとは、学生が置かれている「今・ここ」のあり方とは異なる要素をもつ文章を、その文脈に即して捉え、過去の言葉や文章を理解することです。そのうえで自分なりの見解を構築し、他者が理解しやすいように伝えます。自分が「面白い」あるいは「よくわからない」点を見つけ、言語化することで人に伝える能力が養われます。
1・2年次に仏語は十分に学んでいますが、16世紀の仏語を学生が自分で翻訳するのは困難なので、現代仏語の対訳と日本語訳を参考に読み解きます。16世紀の仏文学を通じて、現代との類似点や相違点を考え、思索を深めてもらいたいです。
志々見 剛 准教授
2013年、ボルドー第三大学で博士号を取得。日本大学法学部助教を経て、2017年より現職。専門:16世紀のフランス文学・思想。
※所属・肩書等は取材当時のものです。